クラビット 500mg

クラビット（レボフロキサシン 500mg）5錠Cravit (Levofloxacin 500mg) 5tabs

クラビット｜概要

クラビットは、レボフロキサシンを有効成分とするニューキノロン系の抗菌薬です。細菌のDNA複製を阻害し、感染症の原因となる細菌を殺菌します。皮膚感染症、呼吸器感染症、泌尿器感染症など、さまざまな細菌感染症の治療に使用されます。

クラビットが適している方（適応症）

クラビットは、以下のような細菌による感染症の治療に使用されます。

• （クラミジア・トラコマティスによる感染症）クラミジア感染症は、男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎などを引き起こすことがあります。
• （子宮内感染）子宮内膜の感染で、下腹部痛や発熱を伴います。
• （子宮付属器炎）​卵管や卵巣の感染で、下腹部痛や発熱が主な症状です。
• （バルトリン腺炎）膣の入口付近にあるバルトリン腺の感染で、痛みや腫れが生じます。
• （呼吸器感染症）急性気管支炎、肺炎など。
• （耳鼻科領域の感染症）副鼻腔炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎（扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む）など。
• （尿路感染症）尿道炎、腎盂腎炎など。
• （皮膚感染症）深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎など。
• （その他）骨盤内炎症性疾患、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎など。

クラビットの使用を避けるべき方（禁忌）

以下の方は、クラビットの使用が禁忌とされています。

• クラビットの成分（レボフロキサシン）や、類似の抗菌薬（オフロキサシンなど）に対してアレルギー反応を起こしたことがある方。
• 炭疽などの重篤な疾患以外では、妊婦や妊娠している可能性のある女性への投与は避けられます。
• 授乳中の方は、クラビットの服用中は授乳を中止することが推奨されています。
• 炭疽などの重篤な疾患以外では、小児への投与は禁忌とされています。

クラビットの服用に注意が必要な方

以下の方は、使用に際して特別な注意が必要です。

• てんかんなどの痙攣性疾患の既往歴がある方は、痙攣を起こす可能性があります。
• 不整脈、虚血性心疾患などの重篤な心疾患がある方は、QT延長などの心電図異常を引き起こす可能性があります。
• 重症筋無力症の方は症状が悪化することがあります。
• 大動脈瘤や大動脈解離の既往、家族歴、またはリスク因子を有する方は、それらの疾患を引き起こす可能性があるため、観察を十分に行う必要があります。
• 腎機能が低下している場合、血中濃度が高く持続する可能性があるため、投与量の調整が必要です。
• 年齢とともに腎機能が低下する傾向があるため、投与量の調整や慎重な経過観察が必要です。

クラビット｜服用方法

クラビットは食事の影響を受けにくいため、食前・食後を問わず服用できますが、服用方法は、治療する感染症の種類や患者さんの状態により異なります。以下は、主な感染症ごとの一般的な服用方法です。

肺炎、急性気管支炎、膀胱炎、腎盂腎炎などの尿路感染症、皮膚感染症などの一般的な細菌感染症

通常、成人は1回500mg（本剤クラビット 500mgは1錠）を1日1回服用します。

治療期間は感染症の種類や重症度により異なりますが、多くの場合、5～14日間程度です。

腸チフス・パラチフス

1回500mg（本剤1錠）を1日1回、14日間連続して服用します。

肺結核およびその他の結核症

クラビットは、他の抗結核薬と併用して使用されます。

通常、1回500mg（本剤1錠）を1日1回服用しますが、具体的な投与期間や併用薬については、医師の指示に従ってください。

クラミジアによる感染症

1回500mg（本剤1錠）を1日1回、7日間連続して服用します。

クラビット｜副作用

クラビット｜軽微な副作用

消化器系の副作用

食欲不振や胃のむかつきが生じることがあります。

嘔吐することがあります。

水様便や頻回の排便が見られることがあります。

お腹の痛みや不快感を感じることがあります。

中枢神経系の副作用

立ちくらみやふらつきを感じることがあります。

頭痛や頭が重く感じることがあります。

付きが悪い、眠れないといった睡眠障害が生じることがあります。

皮膚の副作用

発疹（皮膚に赤い斑点やぶつぶつ）が出ることがあります。

皮膚がむずがゆくなることがあります。

クラビット｜重篤な副作用

以下のの重篤な副作用はまれですが、発生する可能性があります。重篤な副作用が疑われる場合は、直ちに医療機関を受診することが重要です。

• アナフィラキシーショック（全身の赤み、血圧低下、呼吸困難などの急性の重いアレルギー反応）が起こることがあります。
• 筋肉がけいれんすることがあります。
• 心臓のリズムが乱れる（QT延長、心室頻拍）ことがあります。
• 尿の量が減る、むくみが出るなどの腎臓の機能障害が起こることがあります。
• 黄疸（皮膚や白目が黄色くなる）、倦怠感が出るなどの肝臓の障害が起こることがあります。
• アキレス腱炎、腱断裂など、足の腱に痛みや腫れが生じ、最悪の場合断裂することがあります。

クラビット｜その他の副作用

• 食べ物の味が変わる、感じにくくなるなど味覚異常が起こることがあります。
• 目のかすみ、視力低下などが起こることがあります。

クラビット｜その他注意事項

• 用法・用量は、医師の指示に従い、決められた用法・用量を守って服用してください。
• 十分な水分とともに服用することで、薬の吸収を助け、副作用のリスクを減らすことが期待できます。
• 制酸剤やミネラルサプリメントと同時に服用すると、クラビットの吸収が妨げられることがあります。服用間隔を2時間以上空けるようにしましょう。
• 解熱鎮痛薬（NSAIDs）などの一部の解熱鎮痛薬と併用すると、けいれんが起こりやすくなる可能性があります。
• 腎機能が低下している場合、投与量の調整が必要です。
• てんかんなどの痙攣性疾患の既往がある方は、痙攣を起こす可能性があるため、慎重な投与が求められます。
• 耐性菌の発現を防ぐため、感受性を確認し、必要最小限の期間で投与することが推奨されています。

クラビット｜作用機序

クラビット（レボフロキサシン）は細菌感染症の効果的な治療薬です。
感染症は、私たちの健康を脅かす細菌によって引き起こされる病気です。その中でも、肺炎球菌やインフルエンザ菌、ブドウ球菌など、さまざまな細菌に対して効果を発揮する抗菌薬がクラビット（レボフロキサシン）です。この薬は、体内の各組織に移行しやすい特性を持ち、多くの感染症を効率的に治療することができます。また、尿と一緒に排泄されるため、尿路感染症にも効果的に使用できます。クラビット（レボフロキサシン）はニューキノロン系抗菌薬と呼ばれる種類の薬で、細菌に対して特異的な作用を持ちます。

感染症を治療するためには、細菌を排除することが重要です。私たちの免疫系も細菌の撃退に一役買っていますが、病気を速やかに治すためにはクラビット（レボフロキサシン）のような抗菌薬の使用が必要です。抗菌薬は細菌を殺す効果があり、これによって感染症を克服します。

抗菌薬には、「ヒトの細胞には影響を与えないが、細菌には有害である」という特性があります。これを選択毒性といいます。選択毒性によって、細菌を殺すために細菌に特有の機構を標的にする必要があります。

細菌は単細胞生物であり、増殖するためにはDNAの複製が不可欠です。DNAには細菌の生命情報が詰まっています。DNAの複製を妨げれば、細菌は増殖できなくなります。この複製に必要な酵素の一つがDNAジャイレースです。
DNAは二重らせん構造をしており、そのままでは情報の読み取りができません。ここで、DNAの鎖を切断してねじれを解消させ、情報の読み取りを容易にする酵素がDNAジャイレースです。
クラビットはこのDNAジャイレースを阻害することにより、細菌のDNA合成を阻止します。これによって細菌の増殖が妨げられ、細菌が死滅します。このような作用機序により、クラビット（レボフロキサシン）は細菌感染症の治療に効果を発揮します。

重要な点として、ヒトにはDNAジャイレースが存在しないため、クラビット（レボフロキサシン）はヒトの細胞には影響を及ぼしません。ただし、適切な投与量と使用法を守ることが大切です。選択的に細菌に毒性を発揮するメカニズムを利用して、クラビット（レボフロキサシン）は感染症治療の優れた選択肢として広く使われています。

クラビット（レボフロキサシン）の特徴的な点は、薬の濃度によって殺菌作用が左右されることです。このような作用を示す薬を専門用語では「濃度依存型薬物」と呼びます。長らく、「100mg錠を1日3回服用する」という使い方が一般的でしたが、より効果的に薬を活用するためには、一回の投与量を多くすることが重要です。

低用量で長期間にわたって使用すると、薬に対する細菌の耐性が生じる「耐性菌」が出現してしまうことがあります。これを防ぐために、現在では「500mg錠を1日1回服用する」という方法が推奨されています。この方法は、高い初期殺菌効果や耐性菌の出現を抑制することが実証されています。

感染症は私たちの体の防衛システムが働く反応でもありますが、病原微生物と戦うためには効果的な抗菌薬が必要です。クラビット（レボフロキサシン）は幅広い細菌に対して効果を持ち、適切に使用することで感染症の治療や予防に役立ちます。